鹿児島の食に彩を添える薩摩焼の魅力

2021.06.23

【伝統工芸品】食に彩を添える薩摩焼の魅力

薩摩焼のやかん

自宅で過ごす時間が長くなり、豊かな暮らしを求め工夫を凝らす人が増えています。その工夫の1つが料理です。今まで以上に、食材にこだわり手間をかける。そして、出来上がった料理を盛る器選びにも力を入れる人は多いです。

鹿児島の伝統工芸品として知られている薩摩焼は、素材を生かした物から華やかな装飾が施された物まで幅広くあります。鹿児島の風土と文化が作り上げた器は、食卓に彩を添えてくれるでしょう。最近では、若い人も手に取りやすいおしゃれな薩摩焼も登場しています。

今回は、薩摩焼の歴史や種類についてまとめました。

 

目次

▽薩摩焼の歴史

 

▽異なる表情をみせる白もん黒もん

 

▽鹿児島を代表する窯元 沈壽官

 

▽時代と共に進化する薩摩焼

 

〇薩摩焼の歴史

歴史が書かれていそうな古い読み物

薩摩焼の始まりは、1592~1598年に起こった文禄・慶長の役までさかのぼります。当時、朝鮮出兵を行った薩摩藩藩主の島津義弘は、大勢の朝鮮人陶工と一緒に帰鹿しました。連れ帰った朝鮮人陶工の人数は、80人以上と記録されています。

朝鮮人陶工は薩摩藩の領地にそれぞれの窯を開き、焼き物づくりを始めました。焼き物は、陶工の技術や土地条件によって様々な作品が出来上がります。その後、焼き物づくりが盛んになると薩摩焼の窯は5つの系統に分かれました。現在残っている窯場は「苗代系」「龍門司系」「竪野系」の3つになります。

その後、桜島の火山灰を材料に使った黒薩摩や白陶土を使った白薩摩と呼ばれる薩摩焼が誕生しました。

 

〇異なる表情を見せる白もん黒もん

鶴の絵が描かれた白と黒の薩摩焼

出典:沈壽官窯 || Chin Jukan (chin-jukan.co.jp)

 

薩摩焼は、大きく2種類に分けられます。艶のある黒色が美しい黒薩摩と白地に繊細な模様が描かれている白薩摩です。また、黒薩摩を「黒もん」白薩摩を「白もん」と呼ぶこともあります。どちらも歴史ある鹿児島の伝統工芸品ですが、それぞれの特徴は以下の通りです。

 

・黒薩摩(黒もん):桜島の火山灰が含まれている黒色の粘土をもとに作られています。さらに緑や褐色系の釉薬を塗ることによって、深みと艶をだしました。献上用として扱われていた華やかな白薩摩とは対照的に、シンプルで重厚感のある黒薩摩は庶民を中心に親しまれた焼き物です。

主に酒瓶や茶わんなど、実用品を中心に作られました。茶人や大名のなかにも、黒薩摩を好み愛用する人がいたそうです。黒薩摩は龍門司系が力を入れており、釉薬を使った様々な技法で作られています。

 

・白薩摩(白もん):「白陶土」と呼ばれる粘土をもとに作られており、表面には「貫入」と呼ばれる細かいひびが特徴の焼き物です。朝鮮人陶工が持参した白陶土を使い、製作したことが始まりとされています。

鹿児島県には白陶土がなかったため、貴重な材料として扱われていました。また、朝鮮産の白陶土と朝鮮の技術を使って作られる白薩摩は「火計手(ひばかりで)」とも呼ばれています。火以外に、日本産のものを使っていないことが名前の由来です。

その後、鹿児島県内でも白陶土が発掘され、主に藩や島津家など身分の高い人たちが使っていたと記されています。

 

〇鹿児島を代表する窯元沈壽官

窯元沈壽官

出典:沈壽官窯 || Chin Jukan (chin-jukan.co.jp)

 

鹿児島には、薩摩焼の窯元が数多く存在します。そのなかでも有名な窯元が沈壽官窯です。「薩摩焼の里」と呼ばれている美山で、薩摩焼を400年以上焼き続けています。沈壽官窯で作られた白薩摩は、薩摩藩に愛用されていました。

白薩摩には12代沈壽官によって考案された、「透かし彫り」と呼ばれる技法が使われています。繊細で美しい細工が特徴です。現在もその技法を15代当主が受け継いでいます。

また、材料となる土も当主自らブレンドしているそうです。成形にも細心の注意をはらい丹精込めて作り上げてきました。

 

〇時代と共に進化する薩摩焼

緑の風景 

 

古くから鹿児島で作られてきた黒薩摩と白薩摩ですが、昔に比べると使われる機会も少なくなっていました。とくに白薩摩は豪華な装飾のため、普段食事をする食器としては華美すぎる印象を受けます。しかし最近では時代の流れに合わせた薩摩焼も登場し、再び注目されるようになりました。

そのなかでも、薩摩焼の窯元として有名な沈壽官窯とランドスケーププロダクツが共同制作を行う「CHIN JUKAN POTTERY」が注目されています。

薩摩焼特有の滑らかな質感は残し、絵付けなど過度な装飾をしないシンプルなデザインの薩摩焼です。和食だけではなく洋食や中華など、幅広い料理の食器として使えるでしょう。

沈壽官窯と共同制作を行っているランドスケーププロダクツは、家具製作を中心に活動しています。互いの技術と良さを合わせて作り上げた薩摩焼の数々は、日々の食卓に彩を添えてくれるでしょう。

 

参考:ABOUT | CHIN JUKAN POTTERY (chinjukanpottery-store.com)

〇まとめ

・薩摩焼は、藩主である島津義弘が連れ帰った朝鮮陶工によって作られた焼き物が始まり

・庶民に愛された黒薩摩(黒もん)と献上用に作られた白薩摩(白もん)がある

・黒薩摩は龍門司系が力を入れていた

・最近では、普段使いできるシンプルなデザインの薩摩焼が販売されている

 

参考画像

https://www.photo-ac.com/

 

参考URL

https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/119513

https://chinjukanpottery-store.com/

https://www.fukuoka-navi.jp/baeru-kagoshima/21

https://goto-man.com/faq/post-10320/

http://www.chin-jukan.co.jp/

http://www.tougeizanmai.com/tabitetyou/028/04tinjyukan.htm

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