【伝統工芸品】涼やかな薩摩切子を暮らしにとり入れる

2021.10.15

鹿児島県には、薩摩焼の他にも名の通る伝統工芸品が存在します。それが「薩摩切子」です。別名「薩摩ガラス」や「薩摩ビードロ」とも呼ばれています。切子と聞くと「江戸切子」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。薩摩切子と江戸切子の違いは見た目にあります。

 

薩摩切子は、ずっしりと重量感のある佇まいと鮮やかな発色が特徴的の工芸品です。これは当時、薩摩切子が庶民用ではなく外交貿易品用や観賞用として製造されていたことが理由の1つと言われています。

 

現代でも変わらぬ美しさと品のあるデザインから、県内外問わず多くの人々に愛される工芸品です。また、冷酒専用のグラスやお猪口などが有名ですが、平皿や器も存在します。そのため、最近では贈り物ではなく自分用として購入される方も少なくありません。

 

今回は、鹿児島が誇る伝統工芸品「薩摩切子」の特徴や歴史、更には普段の生活へのとり入れ方もまとめました。

 

目次

▽薩摩切子とは

 

▽薩摩切子の歴史

 

▽薩摩切子を生活の中にとり入れる

 

▽まとめ

 

 

〇薩摩切子とは

重厚感があり、艶やかな色ガラスと独特な文様が特徴の薩摩切子は、鹿児島県を代表する伝統工芸品です。

 

「ぼかし」と呼ばれる技法を使い、ガラスにグラデーションをつけています。ぼかしには、透明なガラスの外側に1~3ミリほどの厚さの色ガラスを被せたものを使用。また、色の濃淡をつける方法として、カットの深さや角度・削り加減で調整しているそうです。

 

ガラスの色は、紅・島津紫・藍・緑・黄・赤黄の6色あります。特に紅色は、日本で初めて開発に成功した色として知られており、当時は「薩摩の紅ガラス」と呼ばれていました。最近では重ねて色を出す「二色合わせ」という技法も存在します。

 

その色鮮やかなガラスには文様が施されており、文様の種類も豊富で「魚子紋(ななこ)」「ボブネイル」「和結び紋」「菊花紋」「亀甲紋」「麻の葉紋」などがあります。この文様の組み合わせを変えることで、様々なデザインの薩摩切子が誕生しているのです。

〇薩摩切子の歴史

薩摩切子は1851年、薩摩藩の28代藩主であった島津斉彬の命令によって製造されます。当時は欧米諸国から、開国と通商を求められていた時代のため、外交貿易品や観賞用として扱われていました。

 

ガラスの製造自体は1846年、薩摩藩の27代藩主島津斉興によって行われています。しかし当時は、薩摩切子のような外交貿易品や観賞用ではなく薬品を保存するためのガラス瓶として製造されていました。

 

しかし、薩摩切子誕生の7年後、薩摩藩主であった島津斉彬の急逝によって製造に陰りが見え始めます。更にその後の財政整理のため、薩摩切子の事業は縮小へと追いやられました。1863年に起きた薩英戦争では製造工場が破壊され、1877年の西南戦争前後には完全に製造停止になったと記されています。

製造開始からわずか約20年程で途絶えてしまった薩摩切子ですが、約100年後の1985年に再興プロジェクトが開始。当時の写真や文献、現存していた数少ない実物をもとに薩摩切子は復元されました。

 

現在も切子職人たちの手によって、当時の思いを引き継ぎ様々な薩摩切子の作品が誕生しています。最近では、今まで単色のみで表現していた濃淡を二色使いで表現するなど、新しい技法も生まれました。

 

〇薩摩切子を生活の中にもとり入れる

薩摩切子は、ガラス特有の涼しげな見た目と透明感のある発色が特徴の工芸品です。グラスやお皿なども製造されているため、今からの時期にピッタリではないでしょうか。職人が丹精込めて作った作品を、普段の暮らしにとり入れてみましょう。

 

普段から良いものを使うことで、生活の質も向上します。あまり知られていませんが、定番のカットグラスの他にも箸置きや急須など、さり気なく食卓に彩を与えてくれる作品も製造されています。また、食器以外の作品も多く、香炉や花瓶など飾るだけで空間が華やかになるでしょう。

 

薩摩切子は、どの作品も手間と時間をかけ、1つひとつ職人が手作業で製造しています。そのため、同じ物は存在しません。自分だけのお気に入りを見つけてみましょう。好みの作品を見つけることも、楽しみの方の1つです。

 

通常のガラス製品よりも価格が高めになっていますが、手入れをして大切に扱えば長い期間楽しむことができます。この夏、薩摩切子を暮らしにとり入れて、薩摩の歴史とガラス特有の涼を感じてみてはいかがでしょうか。

〇まとめ

・薩摩切子の特徴は「ぼかし」「色」「文様」

・6色ある中でも紅色は、日本で初めて開発された色であり「薩摩の紅ガラス」と呼ばれていた

・薩摩切子が誕生したのは1851年、28代薩摩藩主島津斉彬が治めていた時代

・1877年頃に一度途絶えるが、約100年の月日を経て復活

・現在は「二色合わせ」と呼ばれる新しい技法も誕生している

・定番のグラスの他にも、箸置きや急須なども製造されている

 

参考画像

https://www.photo-ac.com/

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